経緯
晶析分科会は、(株)日本粉体工業技術協会の20番目の分科会として、豊倉賢先生(現早稲田大学名誉教授)のご指導の下、1997年に発足し、1998年から活動を開始しました。本分科会は、企業に共通した技術的問題の解決と新技術の開発に必要な工学理論の理解、あるいはその新しい工業晶析装置・操作の開発への適用などについての討議を主な活動と考えています。
化学工学会、分離技術会において、晶析グループは、すでに30年を超える、国際交流の歴史があります。(社)日本粉体工業技術協会に晶析分科会が設置されてからも、国際的な技術交流を重要な活動として位置付け発足以来、積極的に講演会を開催してきました。

趣旨
[ 晶析操作の特徴 ]
晶析技術は所望特性の結晶製品を所定量経済的に生産する装置・操作法を発展させるもので、より高度な製品結晶の生産ばかりでなく、省資源、省エネルギープロセスの開発に貢献すると期待されます。20世紀化学工業はコモディティーケミカル・石油化学工業の発展、ハイテク産業を支えた新しい機能性物質の生産、医薬品その他のファインケミカルの展開などで急成長を遂げました。この間石炭から石油によって代わられましたように流体の特性を有効に生かした効率のよい物流管理システムが広く取り入れられ、高効率な産業急速に発展しました。しかしここで21世紀の化学工業を予測しますと新しい高度な特性を持つ高機能物質の生産が化学工業の新展開になる可能性が大きいと考えています。例えば、化学組成が同じでも固体内の分子やイオンの配列が異なると、その物質はより新たな機能を発揮すると考えられます。

[ 結晶の優位性 ]
この新しい機能を安定に保持するには結晶相は優れており、このような所望特性を有する結晶製品を生産する技術の確立は21世紀の化学工業をリードする上で必要と考えております。また、晶析装置内の現象は流体の特性を生かして発展してきました20世紀の化学装置内現象とは異なっております。

[ 晶析プロセス設計のポイント ]
この晶析現象が影響を受ける因子といえば、晶析技術の利用を避ける傾向にありました。それが晶析技術の発展を遅らせてきました。しかし、20世紀後半には化学工学系の研究者や技術者は晶析工学に関する研究会を日本、ヨーロッパ、アメリカにそれぞれ独立に設置しました。それらのメンバーは相互に連絡を取りながら研究を行ない、晶析現象の解明と装置・操作の設計理論を提出してきました。一方、一部企業の技術者は晶析理論に基いて新しい結晶製品を生産するための装置・操作法を設計し、工業プロセスを開発しています。しかし、製品結晶の品質に対する要望は日に日に高まっておりまして、新しい晶析技術を開発するためにはまだまだ多くの研究課題があり、産学協同の研究が必要です。

[ 晶析研究の動向 ]
日本の晶析工学に関する研究グループとしては化学工学会の晶析に関する研究会や分離技術懇話会があり、すでに活発な活動を行っています。前者は産学の会員によって構成されていますが、その活動内容はどちらかといえば大学主導で基礎研究成果の報告や討議が主で、それに付随して関連のある産業界の技術も討議形で運営がなされてきました。また分離技術懇話会では蒸留、吸着などの拡散分離操作の一つとして晶析技術が討議され、特に類似他操作との関連で新しい展開を進めています。

[ 晶析分科会のアプローチ ]
しかし、産業界が抱えている晶析に関する課題とその解決を主目的とした研究分科会は、同封の先生のメモのように幹事会が企業技術者によって構成されていることからも、企業に共通した技術的問題の解決と新技術の開発に必要な工学理論の理解、あるいはその新しい工業晶析装置・操作の開発への適用などについての討議を主な活動と考えています。なお分科会は
 ●正、副コーディネーター
 ●幹事と代表幹事
にて構成し、行事への参加者は正会員企業に所属する社員とします。

[ 晶析分科会の事業計画 ]
行事は年2回目安とし、当面は次の各項目を活動の主要項目とします。
1)次の各項の目的達成ための学習と研究調査
 a)晶析装置・操作の設計
 b)製品結晶の有利な生成条件の探索と制御
 c)新たな晶析技術の開発に関すること
2)晶析工学、技術に関する他分野との交流と情報収集
3)晶析技術に関する国際交流
4)その他本会定款の定める事業
以上のような状況ですので本会の発足に当たって、現在日本粉体工業技術協会の会員で晶析技術に関心の高い方々にご協力をお願い申し上げる次第です。